研究課題/領域番号 |
05670712
|
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
吉田 一郎 久留米大学, 医学部, 助教授 (20182751)
|
研究分担者 |
森田 潤 久留米大学, 医学部, 講師 (10220063)
荒牧 修一 久留米大学, 医学部, 講師 (30211014)
石松 順嗣 久留米大学, 医学部, 講師 (70102093)
|
キーワード | メチルクエン酸 / メチルマロン酸 / 安定同位体希釈法 / 妊婦尿による出生前診断 / 羊水による出生前診断 |
研究概要 |
先天性有機酸血症のなかでも比較的頻度の高いプロピオン酸血症やメチルマロン酸血症の出生前診断を目的として正常妊婦およびリスク妊婦の羊水や妊婦尿を採取し、関連代謝産物を分析定量し、正常値を確立した。プロピオン酸血症の場合にはメチルクエン酸、メチルマロン酸血症の場合にはメチルクエン酸およびメチルマロン酸を安定同位体希釈法を用いて、微量のサンプルでしかも正確に定量できる方法を確立した。この安定同位体希釈法による方法は、酸素測定法などのように細胞培養に要する時間が不必要であることや、遺伝子診断と違って遺伝子異常が未知の場合でも応用可能であるという利点を有する。さらに結果が判明するまでに24〜48時間という迅速性が人工中絶を前提とする出生前診断の場合何よりも重要である。この方法を用いて全国より依頼されたリスク妊婦10名につき、羊水ならびに妊婦尿を分析検討した。10名の内訳はプロピオン酸血症3名、メチルマロン酸血症7名であった。10名の内2名がメチルマロン酸血症、1名がプロピオン酸血症と胎児診断された。正常と診断され妊娠を継続した胎児は出生後、酵素学的、生化学的、臨床的に出生前診断が正しかったことが証明された。妊婦尿によるプロピオン酸血症の出生前診断は現在までわが国では報告されておらず、世界的にもまだ報告が少ない。今回我々が行った妊婦尿による出生前診断は、1)妊娠に気付かなかった場合、2)羊水穿刺を希望しない場合、3)なんらかの理由で中絶時期を逸した場合、4)羊水診断で診断がはっきりしなかった場合、5)羊水診断や遺伝子診断の再確認の場合に利用され、人工妊娠中絶の時期を逸した場合であっても、出生前診断を行うことによって出生後の治療方針を確立することが可能であること等の利点があり、今後経験を蓄積しさらに研究を進めたい。
|