研究概要 |
家族性成長ホルモン単独欠損症タイプII(IGHDII)の症態解明を目的に、GH遺伝子、及びmitochondria遺伝子を検討した。IGHDIIの母、娘、息子の末梢白血球よりgenomicDNAを抽出し、それを材料にして以下の実験をおこなった。 1.GH遺伝子の検討;(1).PCR amplification of hGH gene and cloning:GH遺伝子に特異的なprimerを合成し、PCR法でGH遺伝子の全長(2153bp)を増幅し、それをべクター(pUC18)に挿入し、大腸菌(JM109)を用いてcloningをおこなった。(2).DNA sequencing:5個のSequencing用primerを設定し、cloningしたプラスミドをAuto Sequencerで塩基配列を決定した。その結果、息子の解析で、GH遺伝子のexon5の中で一塩基置換(T→G)を認めた。この変異はGHタンパクの180番のValがGlyに変わると予想された。(3).家族内診断:T→Gの変異は制限酸素BsgIのcutting siteを消失させ、これを利用して家族内診断をおこなった。PCR合成物を鋳型にした、nested PCR(1037bp)をBsgIで処理すると、正常では523、416、98bpに切断され、変異があれば621、416bpとなる。母、娘、息子例では621、523、416bpがみられた、従ってこの変異についてはheterozygotyと考えた。また父親と正常コントロール16名には621bpは認めなかった。2.mitochondria遺伝子の検討;mitochondriaDNA異常症に内分泌疾患の合併が報告されており、mtDNA3243変異(A→G)、3271変異(T→C)の有無を検討した。PCR法で増幅したのち制限酵素(HaeIII,DdeI)処理後のfragmentの泳動パターンより変異の有無を調べた。その結果正常者と同様なパターンで、従って3243変異3271変異はないと考えた。今回の研究で認めた、exon5の一塩基置換とGH分泌低下との関係は証明されていないので、今後はIGHDII症例の遺伝子解析の蓄積とin vitroでのGH発現実験系の確立がIGHDIIの病態解明に必要と思われる。
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