研究概要 |
昨年度に引き続き川崎病の病態にスーパー抗原が関与している可能性を調べるために患者末梢血のT細胞レセプターVβ2、Vβ8の発現の検討を続けた。患者数を20例と増やしたところ、Vβ2、Vβ8の発現に有意差は認められなかった(8.0±2.0%ofVβ2or4.7±1.3%ofVβ8.1 in acute KD,vs7.7±2.0% or4.4±1.5%in convalescent KD,8.4±2.1or3.8±1.2% in contol chidren,7.7%or4.0±0.9%in control adults.)。さらに川崎病患者の病変部皮膚、腫脹リンパ節、及び末梢血から得られたクローンT細胞105個についてVβ2、Vβ8の発現の検討を行ったがやはりすべての細胞でVβ2、Vβ8の発現は認められなかった。また、これらのクローンT細胞のサイトカイン(IL-2、IL-6、TNF-α)産生を検討したところ、これらの多くがTNFαを産生しており、中には844pg/ml、1016pg/mlと高値を示したクローンT細胞が存在した。 これらより、近年、川崎病とVβ2、Vβ8T細胞レセプター発現リンパ球の上昇との関与が報告されているが(AbeJ,J.Exp.Med.1993;177;791-796)、当科症例においてはその確認はできなかった。さらにVβ2、Vβ8の発現が認められないクローンT細胞の多くがTNFαを産生しており、川崎病血管炎を考えるとき、Vβ2、Vβ8T細胞レセプターと関係ないT細胞がTNFαを産生し、川崎病の病態に関与している可能性が示唆された。なお、今回は、Vβ2、Vβ8以外のT細胞レセプターの発現については検討しておらず、スーパー抗原の関与を完全に否定するには至らなかった。
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