生後21日目のC57BL/6マウスの大脳中隔野由来神経細胞とHPRT欠損マウス神経芽細胞腫との細胞融合で作成された培養神経細胞(Lee HJ et al.Develop Brain Res 1990)を3cmプラスチック皿にて培養した後に真空デシケータ内で6、24、48、72時間の低酸素負荷(酸素分圧80mmHg)をかけ、負荷による変化について検討した。培養神経細胞の生存率は負荷6時間で約80%、24時間で約60%、72時間で約50%であった。そして、負荷後の残存細胞におけるneurofilament の免疫組織染色では負荷前の細胞と同様に胞体が明瞭に染まった細胞と染色不良の細胞が混在し、胞体内に空胞を含有したり変形した細胞が見られた。しかし、核の変化は認められなかった。これらの変化を電顕的にみると、低酸素負荷後6時間では膨化してクリステが消失したミトコンドリアが見られた以外胞体内の各小器官は不明瞭となる細胞が見られ、負荷時間が長くなるとともにその変化を示す細胞数は増加した。72時間負荷では胞体内を大小の空胞が占め、胞体内小器官はほとんど認められなくなった。しかし、この時点でも核自体の構造は保たれていた。一方、神経栄養因子(7s NGF、acid FGF、EGF)や神経細胞分化因子(dibutyryl cyclic AMP)を負荷時の培養液に加えたが、加えない場合との間に差を認めなかった。さらに、低酸素負荷後に元の培養状態に48時間置いた後の残存細胞胞体の微細構造は、72時間負荷においても正常の構造へもどっていた。
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