研究概要 |
1.nPKCηの正常ヒト皮膚における局在;ポリクローナル抗nPKCηを用い免疫組織学的方法により検索した.正常ヒト表皮では、顆粒層にほぼ一致して角層化に1-2層の細胞層に強く、細胞質に陽性であった.毛孔部では、毛孔からinfundibulum迄の深さに角層下数層に陽性であった.表皮内汗管は、内層に陽性であった.melanocytes、真皮内汗管、汗腺、内毛根鞘、毛球部、立毛筋、血管、線維芽細胞、神経全て陽性染色は見られなかった. 2.皮膚疾患におけるnPKCηの発現;乾癬皮疹部では、角層下から基底層より上層の有棘層にまで広く陽性所見を示した.有棘細胞癌では、horny pearl周囲の癌細胞に弱陽性であった.基底細胞上皮腫は陰性であった.脂漏性角化症は、角層下の数層の細胞層に陽性であった.色素性母斑は陰性であった. 3.培養ヒト表皮角化細胞におけるnPKCηの局在;KGM無血清培地(Ca^<2+>0.15mM)で培養すると、細胞質に顆粒状に弱く陽性であった.Ca^<2+>濃度を1.8mMに変換すると角化した大型の細胞に強陽性を示した. 4.involucrin,transglutaminase,filaggrinの局在;正常表皮では、nPKCηと同様の分布を示したが、involucrinは有棘層上層から顆粒層に欠けて2-3層に陽性でnPKCηより広く発現している.乾癬ではinvolucrin,transglutaminaseはnPKCηと同様、filaggrinはほぼ陰性であった. 5.これらの結果から、nPKCηは表皮角化細胞の最終分化、cornified envelope形成に関わる酵素であることが推測される. 6.表皮角化細胞に対するneuropeptideの影響;培養ヒト表皮角化細胞を用い、細胞内遊離カルシウムを上昇させる刺激を検索した.epinephrine,histamine,adenosine,bradykinin,thrombin,substance Pは上昇をきたした.vasopressin,acethylcholinは影響を示さなかった.substance Pのこの効果は、細胞外カルシウムをキレートしても認められ、inositol 1,4,5-trisphosphateを上昇させた.thymidine取込みを濃度依存性に軽度抑制した.
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