研究概要 |
1.豚表皮片を用い、神経ペプチドであるサブスタンスPが、表皮細胞のprotein kinase Cを活性化し、inositol 1,4,5-trisphosphateの産生、細胞内遊離カルシウムを上昇させることを報告した(Koizumi H.et al Brit J Dermatol 1992)が、この系では、表皮片にランゲルハンス細胞などの角化細胞以外の細胞の混入、ヒトとの種の違いがある。そこで、培養正常ヒト角化細胞に対するサブスタンスPの影響を検討した。inositol 1,4,5-trisphosphateは一過性に上昇し、3分後に前値に戻った。細胞内遊離カルシウムは、同様一過性に上昇した、この上昇は、細胞外カルシウムEDTAをによりキレートしても認められ、細胞内貯蔵部位からの遊離があると考えた。サブスタンスPは角化細胞増殖作用を示さなかった。このことより、サブスタンスPはヒト表皮角化細胞に対し、イノシトール燐酸を加水分解しinositol 1,4,5-trisphosphateを産生するシグナル伝達をきたすことが示された。細胞増殖をきたさず、その生理作用についてはさらなる検索を要する(Koizumi H.et al.Experimental Dermatology 1994)。 2.正常ヒト皮膚および皮膚疾患において角化の指標となるinvolucri,filaggrin,SPRRを免疫組織染色し、角化の異常について検索した。乾癬、有棘細胞癌、基底細胞上皮腫、尋常性魚鱗癬、水疱型魚鱗癬様紅皮症、SLE、扁平苔癬、湿疹、色素性母斑、悪性黒色腫CTCLについて検索した。SPRRは乾癬、有棘細胞癌、水疱型魚鱗癬様紅皮症、SLE、扁平苔癬において発現が増強し、尋常性魚鱗癬では減弱していた。基底細胞上皮腫は陰性であった(koizumi H.et al.J Dermatol Sci 1994)。先に報告したnPKCηとSPRRの発現は相似しており、SPRRの産生またはcornified envelope形成にnPKCηが関与している可能性があり、さらに検索を進めたい。 insitu hybridization法によるnPKCηのmRNAの発現の局在の検索を行っているところである。
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