類天疱瘡抗原(BPA)は自己免疫性水泡症である類天疱瘡患者の血清中に存在する自己抗体が認識する蛋白である。現在まで少なくとも2種類のBPAが同定されている。一つは分子量230kDaで、もう一つは分子量180kDaのcollagenである。本研究は230kDaBPA遺伝子の調節領域をcloningし、その発現調節機構を明らかにするため計画された。最初に、ヒト230kDaBPAcDNAをprobeとしてヒト、マウスのgenomic libraryをscreeningし陽性cloneを単離した。そのcloneの塩基配列から、そのcloneが230kDaBPAの5 prime領域を含むかどうかを確認した。さらにヒトおよびマウスの230kDaBPAの5 prime領域約3kbの塩基配列を決定し、予想される調節elementを明らかにした。その領域において、ヒトとマウスの塩基配列の高い相同性は230kDaBPAの発現調節が表皮細胞機能に重要であることを示していた。さらに、translation starting site よりヒト230kDaBPAでは上流約2kbを、またマウス230kDaBPAでは約1.2kbをPCRで増幅しchlolamphenicol acetyltranferase(CAT)遺伝子をもつベクターに組み入れ、それを表皮細胞を含む種々の培養細胞に導入した。その結果、それぞれが表皮特異的にCAT活性を発現し、それらの領域は表皮特異的発現のための調節elemenを有することが明らかになった。さらにそのelementを詳細に同定するため5'端よりdelection mutantsを作成し表皮細胞に導入し、CAT活性を測定したところ、表皮特異的発現の調節elementは、ヒトでは-216から-197に、マウスでは-525から-213に存在することが明らかになった。さらに我々は上記以外の関連する研究も行った。すなわち、マウスのgenoimic cloneを使用し、マウス230kDaBPA遺伝子の染色体位置を決定した。またBPA遺伝子の5'領域に認められるAP-1 siteの機能を調べるため、UVによる皮膚の変化におけるストロメライシン遺伝子プロモーターにあるAP-1 siteの役割も検討した。
|