ヒト乳頭腫ウイルスの型特異的造腫瘍効果および細胞変性効果に関する研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05670734
• 研究機関: 熊本大学
• 研究代表者: 江川 清文 熊本大学, 医学部, 講師 (50183215)
• 研究分担者: 小野 友道 熊本大学, 医学部, 教授 (10040586)
• キーワード: ヒトパピローマウイルス / 型特異的細胞変性効果 / 細胞質内封入体 / 封入体疾質 / 表皮様嚢腫 / エックリン汗管

研究概要

1.ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus、以下HPVと略)の型特異的細胞変性効果のうち、細胞質内に出現する特異な顆粒(細胞質内封入体)をgranular(Gr)型、filamenfous(Fl)型、homogeneous(Hg)型に分類、各々が、HPV1型、HPV63型、HPV65型の感染と特異的に相関することを明らかにし、臨床的特徴とも併せて封入体の出現するウイルス性疾質(封入体疾質の新しい分類を提唱した。研究の途中でHPV1とHPV63の重感染例を経験、二種の異なるHPVの初めての重感染例の発見となった。この時、感染細胞の細胞質内にはHPV63のFl型封入体のみしか発現しておらず、HPV63によるHPV1の細胞変性効果の抑制が推論された。
2.足底粉瘤の多発例を検討した結果、すべての粉瘤にHPV60DNAとエックリン汗管の存在が認められた。このことはHPVのエックリン汗管への感染が足底粉部(表皮様嚢腫)の発症メカニズムである可能性を示唆した。
次いで、足底粉痛の多数例について、HPV感染、およびエックリン汗管の関与の普遍性が検討され、検討例の約30%にHPV感染が、また約70%にエックリン汗管が認められた。永く病因の不明であった足底粉瘤の新しい発症メカニズムとしてのエックリン由来嚢腫を提唱した(論文投稿中)

研究成果

• [文献書誌] KIYOFUMI EGAWA: "Mulfiple plantai epidermoid cysts harboring CEA as well as HPV DNA sequences" Jownal of America Academy of Dermafology. 30,(発表予定). (1994)
• [文献書誌] 江川清文: "嚢腫壁にエックリン汗管を認めたHPV60関連足底表皮様嚢腫の一例" 日本皮膚科学会雑誌. 104,(発表予定). (1994)
• [文献書誌] KIYOFUMI EGAWA: "New type of human papillmavirues and intracytoplasmic inclusion bodies:a classification of inclusion warts according to clinical features histology and associacted HPV types." British Journal of Dermatology. 130. 158-166 (1994)
• [文献書誌] KIYOFUMI EGAWA: "Double infection with HPV-1 and HPV63 in single cells of a lesion displaying only an HPV63-induced cytopathogenic effect" Laboratory Investigation. 69. 583-588 (1993)
• [文献書誌] KIYOFUMI EGAWA: "Two novel types of human papillomaviruses,HPV63 and HPV65:comparisons of theirclinical and histological features and sequences to other HPV types." Virology. 194. 789-799 (1993)
• [文献書誌] KIYOFUMI EGAWA: "Varied clinical morphology of HPV-1 induced warts,depending on the anatomical factors." British Journal of Dermatology. 128. 271-276 (1993)