研究概要 |
1)ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus;HPV)の型特異的変性効果の一つである細胞質内封入体(疣贅)について、臨床像、組織像、原因HPVの型の違いによる新分類の提唱をBr.J.Dermatol.(1994;130:158-166)誌上に発表した。これらはHPV1関連granular型封入体,HPV4,60,65関連homogeneous型封入体、およびHPV63関連filamentous型封入体であり、現在関連各HPV型のE4遺伝子蛋白に対する特異抗体を作成中であり、同遺伝子の封入体形成への関与を検討する予定である。 2)従来、病因の不明であった(手掌)足底表皮様嚢腫119例についての検討結果、強いエックリン汗管との関連、及び特定HPV型(現在のところHPV60のみが検出されている)の感染を明らかにし、本腫瘍の新発症メカニズムを提唱した(Br.J.Dermatol.1995.in press).すなわち、手掌、足底発症の表皮様嚢腫については、HPV60の汗管上皮への特異的親和性に基づく感染により引き起こされている可能性について述べた。 3)表皮様嚢腫とエックリン汗管、及びHPV感染との関連の可能性について研究範囲を手掌、足底以外の発症例まで拡大した結果、躯幹発症の表皮様嚢腫についてもエックリン汗管あるいはHPV感染との関与が示唆される知見がえられた(Am.J.Dermatopathol.1995;17:71-74).表皮様嚢腫の真の発症メカニズムについては、今後新HPV型の関与の可能性も含めた多方面からの、また多数例についての検討が重要であることを述べた。
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