研究概要 |
1.ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)の型特異的細胞変性効果の一つである細胞質内封入体を有する疣贅は封入体疣贅と呼ばれ、従来HPV1型によるものが知られていた。封入体疣贅は型特異的細胞変性効果の意義および発現メカニズムを研究する最良モデルである。またHPVに担われる遺伝子の一つE4の働きを知る上でも重要である。我々は新しい2種の封入体疣贅を発見、記載した。これらから2種の新HPVをクローニングし、これらはHPV63とHPV65と命名された。 2.HPV1,HPV4,HPV60,HPV63およびHPV65のE4蛋白に対する特異抗体を作製した。これらを用いた免疫酵素抗体法により、各HPV型のE4蛋白の組織切片上での分布を検討した。この結果E4蛋白は、それぞれ対応するHPV型感染による疣贅の、封入体を有する細胞に概ね一致して細胞質内および封入体に関連して分布することが解った。このことはHPVの型に拘わらずE4蛋白が封入体の生成に関与することを示すものと考えられた。 3.足底の粉瘤(表皮様嚢腫)については、長く外傷などによる表皮の真皮内迷入説が信じられて来たが、我々はこれとは全く異なる、新しい発症病理機構を示唆する結果を得た。すなはち、我々は手掌足底表皮様嚢腫に高頻度にエクリン汗管が検出されることを、病理組織学的および免疫組織学的に証明した。続いて、新しく経験した10数例の連続切片を用いた検討では全例がエクリン汗管由来である確証を得た。 主として我々が問題提起して来た足底表皮様嚢腫発症機構におけるHPVの役割について、HPV60およびその他の新HPV型を含む複数種のHPVが関与する可能性を明らかにした。また平行して明らかにしたエクリン汗管との関連は、あるHPV型(HPV60を含む)がエックリン汗管上皮を標的細胞とする可能性を示唆した。
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