研究概要 |
エックリン汗腺とアポクリン汗腺における陰性荷電部位の超微構造における分布をcationic colloidal goldを用いて明らかにした。陰性荷電部位の酵素消化に対する感受性の違いから、それらを構成する分子の性質を明らかにして汗腺機能との関係を追求した。エックリン汗腺では分泌細胞の基底膜側細胞膜が陰性荷電を示した。この陰性荷電部位はchondroitinase ABCにより消化された。これはchondroitin sulfateあるいはdermatan sulfateの硫酸基がエックリン汗腺基底膜側細胞膜の陰性荷電を担っていることを示している。アポクリン汗腺では分泌細胞の腺腔側細胞膜が陰性荷電を示している。この陰性荷電部位はneuraminidaseにより消化された。これはシアル酸がアポクリン汗腺の腺腔側細胞膜の陰性荷電を担っていることを示している。エックリン汗腺とアポクリン汗腺では陰性荷電部位の分布が異なるだけではなく構成する分子も異なっていた。これらの結果は論文として発表した(J Histochem Cytochem 41:1197-1207,1993)。 Alkaline phosphataseは細胞膜輸送に関係した酵素と考えられている。ヒト汗腺におけるalkaline phosphataseの分布を酵素組織化学的に明らかにした。Alkaline phosphatase活性はエックリン汗腺では細胞間微小汗管に限局して存在していた。この結果は細胞間微小汗管は単に腺腔側細胞膜の表面積を増大させるだけではなく、機能的に分化した構造であり汗産生に深く係わっていることを示している。アポクリン汗腺では筋上皮細胞膜の分泌細胞に接している部分と、分泌細胞膜の基底膜側で筋上皮細胞に接している部分に酵素活性が認められた。エックリン汗腺とアポクリン汗腺の筋上皮細胞ではalkaline phosphatase活性の分布が異なっており、これは両汗腺の機能的差を反映したものと考えられた。これらの結果はThe Second Tricontinental Meeting for Investigative Dermatology(抄録:J Invest Dermatol 101:403A,1993)において発表した。
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