本研究では、in vitroにおいてin vivoと同様の組織像を再現できる培養系が必須であり、この新しい培養系の確立は実験の成否に関わる絶対的条件である。そこで、実験の順序を一部変更し、"in vitroにおける表皮形成の再現"という課題より実験を開始した。まずコラーゲンゲル内に線維芽細胞の株化細胞である3T3細胞を封入し、この上で株化角化細胞を培養し、その後ゲルを培養ディッシュより剥離し培養液中に浮遊させ、この状態で更に5日培養を継続した。上記の手法によりin vivo類似の組織像が得られるものと予想されたが、残念ながら角化の最終過程における組織像は本実験の条件を満たすものではなかった。これらより得た実験的再現表皮の組織像はその後の実験の条件を満たすものではなかった。そこで近年培養肝細胞に機能的役割を果たさせることの出来る培養方法が確立されたので、この手法を用いて表皮細胞を培養してみた。尚、実験にはin vivoに近い状態を再現するため、包皮より得た正常角化細胞と線維芽細胞を用いた。この操作により培養細胞は球体を形成したまま培養液中に浮遊しながら分化した。興味深いことに表皮細胞はこの培養方法では角化しないまま重層化し、4日目を過ぎると急速に死滅した。現在、最近新しい形態形成因子としてepimorphinが注目を集めているが、これを上記の培養系に加えることを試みている。またもう一つの課題である培養細胞への遺伝子導入についてエレクトロポレーション法に関する基礎的研究を行った。導入する遺伝子は既に入手してあった毛型ケラチン遺伝子を用い、数多くの株化培養細胞にこれを導入し、発現してきた毛型ケラチンは特異的なモノクローナル抗体により組織化学的手法により検出した。以上の実験を現在継続中であり、早晩何らかの成果が得られるものと確信している。
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