研究概要 |
本研究は紫外線(UV)-sensitiveなmale hairless mouse;(HR-1xHR/De)F1を対象に、UV照射による皮膚黒化機構への後葉性α-melanocyte stimulating hormone(αMSH)の生理的役割を検討することを目的とした。 1.in vivo実験成績:(1)下垂体後葉除去(LOBEX)および下垂体除去(HYPOX)の両手術は血中αMSH濃度を著明に減少すると共に、長期UV照射による背側皮膚の黒化を阻害したが、(2)両群へのαMSHの補充的投与はUVの黒化反応を復帰させた。さらにLOBEXに焦点を当て詳細な検討を行ったところ、(3)melanin合成の律速酵素とされる表皮内基礎tyrosinase活性(TA)は血中αMSH濃度と正の相関を示し、また(4)UV照射はSHAM(control;C),LOBEX+αMSH,LOBEXのすべての群でTAを増加させた。なお、LOBEX群UV照射後のTA値はC群の20%に止まった。一方、(5)血中αMSH濃度はUVの長期および単一照射後も変化は認められなかった、次いで行った薬理学的LOBEX、すなわちdopamine(DA)agonist;bromocriptine(BROM)の投与は、(6)血中αMSH濃度をLOBEXと同様に著減させたが、基礎TA値は逆にC群より高く、UV照射後も皮膚黒化とC群と近似する高TA値が観察された。 2.in vitro実験成績:(1)DAは培養した後葉細胞からのαMSH分泌をdose-dependentに抑制し、さらに皮膚組織の培養系においては、(2)αMSHおよびBROMは共にdose-dependentに表皮TAを増加させた。また、(3)UV照射もTAへの強い刺激作用を有したが、αMSHとBROMはUV照射によるTAの上昇をさらに増強することはなかった。 以上から、循環血中αMSHは主に後葉由来であり、表皮内基礎TAを介してUV照射による皮膚黒化機構内で作動するものと推量される。一方、UV照射→後葉αMSHの分泌亢進→TAの賦活化→melanin合成という一連の現象が進行するとは考え難く、むしろ局所的TA刺激因子あるいは機構が関与する可能性を示唆したものと思われる。
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