ハプテン結合脾細胞の投与によってマウスの脾臓に誘導される抑制性細胞の産生する非特異的抑制因子NSFの皮膚ランゲルハンス細胞(LC)の抗原提示能に及ぼす影響を検討した。 (1)まずLCの抗原提示能を測定する系を確立した。皮膚のLCはハプテン塗布後リンパ節に流入し、抗原提示細胞へ成熟するといわれている。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)塗布後に分離したLCを含む表皮細胞(FITC-EC)の抗原提示能即ち接触アレルギーの誘導能を調べたところFITC塗布24時間後のFITC-ECが顕著に強い抗原提示能を示し、レシピエントに強い接触アレルギーを誘導し、LCを含む表皮細胞はその場で抗原提示細胞へと成熟するという新しい事実が判明したた。FITC塗布後の表示細胞のFITC保持量をFACScan測定したところ、FITC塗布24時間後より1時間後のほうが多く、抗原提示能とは平行していなかった。このことは表皮細胞がハプテン刺激後、抗原提示細胞へと成熟するには一定の時間が必要であることが明らかになった。さらに、あらかじめFITCを塗布し特異免疫が成立したマウスにFITCを塗布し分離したFITC-ECは、非感作のマウスのFITC-ECより強い抗原提示能を示した。このことから感作マウスでの表示細胞には未感作の場合に比べ抗原提示能を増強する因子が存在するものと考えられる。 (2)このFITC-ECの抗原提示能に及ぼすNSFの影響を調べた。非感作およびFITC感作マウスのFITC-ECはNSF処理によって有意に抗原提示能が低下した。このことは、試験管内でのFITC特異T細胞のFITC-EC刺激による増殖能の系でも観察された。 (3)NSFによる抗原提示能抑制の作用機構を明らかにするためにNSF添加のもとに表示細胞を培養し、LCを分離精製し抗原提示に関わる表面抗原の発現の様相を調べた所、共刺激因子であるB7、T細胞との接着に関わるICAM-1の発現にNSFは影響を与えていなかったが、T細胞に抗原を渡す手であるMHC ClassII(Ia)抗原発現量が低下していることがわかった。
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