研究概要 |
組織学的検討のため、家兎の耳介動脈および伏在動脈から各種抗癌剤ファルモルビシン(EPIR)1mg(1mg/ml),5-FUを25mg(25mg/0.5ml)、MMCを0.5mg(0.5mg/ml)動注し、局所動脈を取り出して光顕で観察した。組織学的に明らかな変化は認めなかった。薬理学的検討のため、ウイスターラットの大動脈を用いた。血管内皮のNO系に対する影響をみるため内皮つきの血管標本でAchに対する弛緩反応を、平滑筋に対する影響をみるため内皮なしの標本でSNPに対する弛緩反応を検討した。in vitroでは10^<-5>MのEPIR,5-FU及びMMCとともに血管標本を2時間incubationした。EPIRはAchに対する弛緩反応を抑制したが、SNPに対する弛緩反応は抑制せず、血管内皮のNO関連機能を低下させることが明らかとなった。5-FU、MMCは弛緩反応に影響しなかった。EPIRはin vivo投与も検討した。2mg/kgのEPIRを7日間腹腔内投与した後に屠殺し、上記と同様の方法でAch あるいはSNPに対する反応を検討した。EPIRのin vivo投与は弛緩反応に影響しなかった。以上本実験よりEPIRは血管内皮のNO関連機能を抑制し、局所血流を変化させる可能性が示唆された。in vivoではこの作用は証明されなかったが、in vivo投与群の血中EPIR濃度は4.3×10^<-8>Mであり、in vitro投与との違いは濃度差によると考えられた。また、この結果より低濃度でのEPIR動注が血管変化を防止しうる可能性も示唆された。
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