近年のCT装置の性能の向上は著しいものがある。他方、びまん性肺疾患に於けるCTによる診断の有用性はほぼ確立している。したがってCTの性能向上に合わせて設影の視点を変えて行く必要がある。本研究で肺標本のCTを施行し、肺既存構造の描出能、一部のびまん性病変の所見を評価した。CT装置はヘリカルCTが可能な東芝社製:X-Vigorである。 1.肺の2次小葉の描出について 2次小葉の境界部にある肺胸膜と小葉間隔壁は薄い膜様構造でCT上見難いので余り注目されていない。今回、両構造の胸膜移行部が他の部分に比べて厚いのでCT上明瞭に描出され、不等辺多角形の紋様を示すことが分かった。この紋様は肺表面に見られる2次小葉の境界と一致した。肺胸膜・小葉間隔壁移行部は厚い結合織に包まれたリンパ管と血管が存在し、全体としてX線吸収が高いので明瞭に描出されると考えられた。2次小葉の中心部にある小肺動脈は200〜300ミクロン以上の直径があり、この構造はCTで感知しうる最小血管とおもわれた。それ以下の細動脈は描出されなかった。 2.小葉中心性の粒状病変について 小葉中心性の病変はCTの精度をチェックするのに適した病変なので詳しく検討した。中枢部の気管支に狭窄が存在した肺葉に、びまん性の粒状病変がCTで発見され、それらの分布は小葉中心の肺動脈と重なり、その一方で小葉間隔壁から離れているのが明解に分かった。組織学的検討で、細気管支炎・器質化肺炎が認められた。
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