動脈硬化性狭窄病変に対するPTA後の再狭窄防止のために薬物療法やステント等が検討されているが有効な方法は得られていない。PTA後の再狭窄は中膜に存在する平滑筋細胞が内膜に遊走、増殖し、内膜過形成を生じることによると考えられている。内膜に遊走する平滑筋細胞は合成、増殖能を持つようになる。放射線照射によりこの平滑筋細胞の合成、増殖能を低下できる可能性があり、動物実験にて放射線学的、組織学的検討を行ってきたので平成6年度の研究実績の概要を報告する。 対象動物はウサギで、大腿動脈にair-drying法を用いて内皮細胞の損傷をおこし、高コレステロール食を与え動脈硬化性狭窄病変を作成した。両側大腿動脈に狭窄病変を作成し、一方の大腿動脈に放射線照射を行い、反対側はコントロールとした。放射線照射の時期は狭窄病変作成直後とし、放射線照射線量は2、5、10、20Gyとした。評価は4週後右頚動脈からカテーテルを大動脈に挿入し血管造影を行った後、sacrifyし組織学的検討を行った。 結果は、2および5Gyの照射部は対照部と比べ、血管造影上狭窄が高度のものが多く、組織学的にも内膜肥厚が強い傾向が得られた。一方10および20Gy照射部では対照部と比べ、血管造影上狭窄が軽度のものが多く、組織学的にも有意に内膜肥厚が軽度であった。しかし20Gy照射部では中膜の菲薄化や内弾性板の平坦化を高率に認め、血管造影上も血管の拡張がみられる例が多かった。 本研究により放射線照射はPTA後の内膜肥厚を予防できる可能性が示唆された。また放射線照射の線量は10Gy程度が適当と思われ、20Gyは血管侵襲を起こし過線量と考えられた。今後は放射線照射部と対照部の平滑筋細胞の質的変化の検討や長期経過観察による放射線照射の影響の検討も必要と考えられた。
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