腫瘍に関連したモノクローナル抗体をラジオアイソトープ(RI)にて標識して投与し、腫瘍の局在を知り、治療を目的としたイムノターゲティングは活発に研究されているが、臨床への完全な実施に際し、RIの非特異的な集積と腫瘍部位への集積量の低さが問題になっている。本研究ではRIだけでなく、薬剤をも抗体に複合(コンジュゲート)させ、この2つを同時に腫瘍にタ-ゲィングさせることで、薬剤の働きを借りてRIを効率良く腫瘍に集積させる方法を確立することを目的としている。本年度は脱ヨード化のために集積が低下する現象を防ぐ薬剤を中心に検討した。 (1)脱ヨード化を防ぐ薬剤として細胞内のライソゾーム酵素阻害剤のヴェラパミール(V)、モネンソン(M)、クロロキン(C)、リドカイン(R)を選択した。これらの薬剤をマウス静注の場合のLD_<50>の1/10量、腫瘍に局注した。 (2)動物モデルはヒト胃ガン細胞を植え付けたヌードマウスを用い、これに^<125>I-標識した抗CEA抗体を静注した。 (3)上記の薬剤はいずれも初期の腫瘍集積を上昇させた。しかし、この集積は時間が経過するにつれ、対照群(無処置)と同様に低下した。 (4)上記の薬剤はいずれも血中のクリアランスを早めた。結果的に腫瘍/血液比は対照群よりも約5倍増加した。 (5)血中の標識抗体は薬剤投与群では対照群よりも安定であったが、時間が経過すると対照群と同様に抗体は小さい分画に分解していた。 (6)上記の薬剤は抗体が分解して小さくなる時期を遅らせることはできるが、その後のヨード化を抑制することはできなかった。 (7)これらの薬剤を抗体にコンジュゲートさせ腫瘍への特異的集積を検討中である。
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