セントロメア特異的プローブを用いた蛍光インサイツハイブリダイゼーション法を、子宮頸癌放射線照射治療患者あるいは甲状腺癌放射性ヨード内服治療患者より得られた末梢血リンパ球の染色体に対して施行した。出現する二動原体染色体、無動原体断片を計数した.インビトロによる血液照射から得られた線量依存曲線よりそれぞれの被爆線量を推定した.その結果、定型的な放射線照射治療(10MeV x線 50Gy分割照射)を受けた子宮頸癌の患者では全身照射に換算して10MeV x線 1Gy程度の被爆を受けていることが明らかとなった.また100-150mCiの放射性ヨードの内服治療を受けた甲状腺癌患者では同様に10MeVx線0.7Gy程度の全身被爆を受けていることが明らかとなった. 染色体ペインティング法は特定の一対の相同染色体を染めだすことを可能にする技術で、最近進歩を遂げ染色体異常の解析に広く応用されるようになっている.染色体ペインティング法を用いることにより、不安定型染色体異常ばかりでなく染色体の切断も含めた安定型の染色体異常をより容易に検出することが可能である.現在子宮頸癌あるいは甲状腺癌の患者に誘発される染色体異常をペインティング法を用いて解析している.ペインティング法によると、セントロメア特異的プローブによる蛍光インサイツハイブリダイゼーション法と比較し得られる推定被爆線量がより高い傾向にあることが分かった.これは不安定型染色体異常に比べ安定型染色体異常がより優位に誘発されている可能性を示唆する。この点に関し、より詳細に解析して行く予定である.
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