平成7年度までの経過 平成7年度までは、前年度までに確立したオカダ酸、カリクリンAなどの蛋白質脱リン酸化酵素阻害剤を用いた未成熟染色体凝縮法を用いて、照射リンパ球より染色体を効率良く得ることを目的とし、さらにその染色体異常を解析した。 放射線の照射量を増加していくと細胞の傷害も大きくなることから、細胞周期が停止し、染色体を得ることが著しく困難となる。通常10Gyを越えるとこの効果は顕著となり、その染色体の解析は困難であった。40Gy照射後のリンパ球よりも、オカダ酸あるいはカリクリンAは、極めて効率良く未成熟染色体凝縮が誘発し、高度に異常を起こした染色体を観察し解析することが可能であった。放射線照射後、従来の方法では染色体を得るのが困難な状況においても本方法では効率良く染色体を得ることが可能であり、従来の方法では不可能であった高線量照射領域における線量反応曲線をえることが可能となった。また未成熟染色体凝縮法は、リンパ球の活性が低く染色体を得られにくかった患者からも染色体標本を得ることを可能とするため、データの集積が効率化されている. また染色体の解析法として、蛍光インサイツ雑種形成法(FISH)が広く使われているが、蛍光色素の退色、蛍光シグナルの強度、検体が保存できないなどの短所を持つ。 これを補うため金コロイド法と銀増感法による新しいインサイツ雑種形成法(金インサイツ雑種形成法: GISH)を開発した。この方法により標本を通常の光学顕微鏡により観察し、また標本の永久保存を可能とした。
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