これまで28例の難治性うつ病患者において、FMSS(感情表出に関する5分間スピーチサンプル)を用いてEE(感情表出)を評価した。また、精神症状についてはHamiltonおよびZungのうつ病評価スケールを用いて評価した。これまでに得られた結果としては、1.EEの高い場合には、うつ病相の反復回数が多い傾向にあった。2.EEの高い場合には、うつ病評価スケールで高得点をとる傾向にあった。 これらの結果からは、高EEとうつ病相数およびうつ病症状の重篤度との関連が推測される。しかし、高EEが病相数の増加つまり再発の原因となり、症状悪化の原因ともなるのかどうか、すなわち、高EEがうつ病の病因および病像形成因であるのか、あるいは全く逆に、病相の増加や症状の悪化によって2次的にEEが影響を受けるのかどうかについては判断できない。この点に関しては、今後の心理教育がEEに与える影響、症例の抑うつ症状の経時的な評価を観察し、慎重に検討する必要がある。 現在、一部の症例において心理教育を実施しているが、これは対象者からは全般的に正の評価で受け入れられている。この心理教育によって高EEを有する者のEEの値をどの程度低下させることが可能であるかどうか、さらには、それによって患者の症状にどのような影響を与えることが可能であるかを検討することを今後の研究の課題としたい。
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