1、メッセンジャーRNAの微量定量法の確立するため、reverse transcriptase-polymerase chain reaction(RT-PCR)を用いる方法を検討してきたが、厳密な定量化が極めて困難であった。最終的に死後脳において標的物質の変化を検討することを考慮すると、むしろ合成ペプチドを用いて標的物質に対する抗体を作製し、ウェスタンブッロティングにより定量化する方法が妥当と考えられた。cDNAが入手可能で比較的発現の多いメッセンジャーRNAについてはノザンブロティングで定量し、それ以外では合成ペプチドを用いて標的蛋白に対する抗体を作製することを原則とする方向が妥当であると思われた。 2、細胞内情報伝達において重要な役割を担っているカルシウム結合蛋白のなかでも神経特異的ビジニン類似蛋白のメッセンジャーRNA発現の変化を、ノザンブロティングによりフェンサイクリジン(PCP)単回投与ラットの大脳辺縁系を中心に時間経過(急性:1時間後、遷延性:24時間後)を考慮して調べた。PCP投与後1時間ではいずれの部位においても有意な変化がみられなかったが、24時間後では、側坐核で有意な減少がみられた。こうした遅延性変化はヒトにおけるPCP精神病発病の時間経過と一致し、何らかの連関が示唆された。この結果はJournal of Neural Transmissionに発表の予定である。 3、ウェスタンブッロティングによる免疫定量として、現在、グルタミン酸トランスポーターに対する抗体を作製し、PCP急性投与、メタンフェタミン(MAP)急性ならびに反復投与により行動学的に逆耐性を形成したラット脳において検討中である。MAP急性投与では有意な変化はみられなかったが、PCP急性投与後24時間では海馬での減少がみられた。MAP反復投与により行動学的に逆耐性を形成したラットでは線条体で有意の増加がみられた。この結果は平成6年度3月に学会発表の予定である。
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