平成5、6年度に引き続きさらに症例を増やし、最終的に精神分裂病67名、気分障害11名、各種神経疾患41名、対照正常者29名から採血を行い、血球からDNAを抽出し、PCRにてそれぞれの多型部分を検討した。調べた多型は、D_2の311番目のセリンがシステインに置換している変異部分、D_3のBalI多型部分、D_4の48塩基の繰り返し部分、ドパミントランスポーターの40塩基の繰り返し部分である。その結果、それぞれの多型の頻度は、D_2では検討したうち7例にセリン/システインのヘテロ接合体を持つものがあり、ホモのものはなかった。7例中2例はともに家族歴を持つ分裂症であった。D_3では、野性型21例、ヘテロ変異型5例、ホモ変異型2例であった。ホモの2例はともに初発症状が昏迷であった。D_4では繰り返し回数が4回のもの以外に、2回のものもみられた。ドパミントランスポーターでは、繰り返し回数が10回のものが最も多く、9回や7回のものもわずかにみられた。しかし、性、発症年齢、家族歴、ICD-LDによる診断名、臨床経過型、罹病期間、再発回数、初発時の状態像、採血時BPRSによる症状評価、薬物の治療反応性、採血前の治療歴、副作用の種類と程度とこれらの多型との間に有意な関連は見いだされなかった。また、多発家系からの症例や遅発性ジストニアなどの特殊な副作用を呈した症例を特にとりあげて検討したがこれらの多型との有意な関連はみられなかった。このことから、本研究で調べたドパミン受容体ならびにトランスポーターの多型は、分裂病の罹患性や薬物反応性との関連は少ないと考えられた。ただし、D_2の多型と分裂病の家族歴、D_3の多型と昏迷状態での発症例の関係は、今后さらに検討する必要があると思われる。
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