研究概要 |
前頭葉に病変の主座を有するピック病3例、進行性皮質下グリオージス1例、運動ニュウロン疾患(MND)を伴う初老期痴呆3例について、前頭葉、基底核、視床、海馬、小脳、中脳をH-E,Luxol Fast Boue M Bethenamine Bodian,Hirano法で染色し、神経細胞の変化を量・質的に評化した。また脳梁膝部を後端とする前頭葉前額断の半球標本を作り、H-E,Luxal Fast Blue,Methenamine Bodian,Holzer法で染色し、白質病変を検討した。ピック病とMNDを伴う初老期痴呆では、前頭-側頭葉、尾状核、中脳に萎縮を認めるが、その程度はピック病で明らかに強い。黒質の病変は必須ではない。進行性皮質下グリオージスでは、皮質下白質のグリオーゼが目だたが、ピック病やMNDを伴う初老期痴呆でも皮質下白質のグリオーゼは観察され、ピック病でその程度は最に強い。前頭-側頭葉皮質神経細胞は、ピツク病で最も強く、次いでMNDを伴う初老期痴呆である。進行性皮質下グリオージスでは、神経細胞脱落はほとんどみられない。これらの所見から前頭葉痴呆の病理学的基盤は、前頭-側頭葉の病変だけではなく、尾状核、黒質、皮質下白質の病変がいろいろな程度に関与していると考えられる。前頭型痴呆は、その病変分布から(1)皮質型(大脳皮質神経細胞脱落+皮質下白質の軽度グリオーゼ+黒質の軽度変性)、(2)皮質-黒質型(大脳、皮質神経細胞脱落+皮質下白質の軽度グリオーゼ+黒質の中〜高度変性、(3)皮質-視床型(大脳皮質神経細胞脱落;皮質下白質の軽度グリオーゼ+視床の中〜高度変性、(4)皮質下白質グリオーゼ型(大脳皮質神経細胞の軽度脱落+皮質下白質の高度グリオーゼ+黒質の軽〜高度変性)に分けることができる。これらの分類と病因については検討課題である。
|