ライソゾーム系輸送経路とアミロイド前駆体蛋白の処理過程に関する分子生物学的研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05670817
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 高畑 直彦 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20000987)
• 研究分担者: 藤井 充 札幌医科大学, 医学部, 助手 (80199299) ; 深津 亮 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (10113614)
• キーワード: アルツハイマー病 / アミロイド前駆体蛋白 / 細胞内輸送システム / ライソゾーム経路 / 細胞内処理過程 / 熱ショック / beta蛋白

研究概要

アルツハイマー病(AD)脳には初期から老人斑、アミロイド・アンギオパチーなどの特有な病変が見られる。これらの病変には共通してアミロイドbeta蛋白が見いだされ、進行するとPHFの形成そして神経細胞死に至ると考えられている。700個前後のアミノ酸かなるアミロイドの前駆体蛋白(APP)は、種を越えてよく保存されており構成的に発現されている。しかし、熱ショックなどのストレスに反応して発現量が増加するストレス蛋白としての性格も有している。従って、APPがどの様な場合に、細胞内のどこで、どの様な機構により処理を受けてbeta蛋白が生成されアミロイド形成に至るのかを明らかにすることは重要な課題である。ここでは特にライソゾームが果たす役割につき以下の検討を行った。
1)APPの処理過程とライソゾーム経路に関する生化学的検討:ヒト血液細胞由来の細胞株を培養した細胞分画法により、画分を得てAPP断片の性格を免疫学的に調べた。APPの性質は画分によって相違が見られたが、興味あることにamyloidgenicと考えられる50kDaないし20kDaのAPP断片がライソゾームの酵素活性に一致して見いだされた。また各種のリソソーム酵素阻害剤存在下で細胞を培養すると、この断片は明瞭となった。
2)熱ショック下でのAPPの処理過程とライソゾーム経路に関する生化学的検討:
熱ショック処理によりAPPが過剰に発現される場合にもライソゾームの酵素活性、免疫学的活性に一致して前述のamyloidgenicな断片が認められた。現在のところ、熱ショック下で特有のAPPの変化は見い出されていないが、この断片は明瞭となった。ライソゾーム経路がbeta蛋白の生成に重要であることが示された。

研究成果

• [文献書誌] K Tuzuki et al: "Amymloidgenic fragments of amyloid precursor protein in cells cultured under lysosomotrophic agents" Brain Research. (in press).
• [文献書誌] Y Takamaru et al: "Localization of APP fragments in the cells cultured under lysosomotrophic agents" Brain Research. (in press).
• [文献書誌] Y Takamaru et al: "Novel monoclonal antibodies raised against native brain amyloid recognizes Apo E" Acta Neuropathologica. (submitted).
• [文献書誌] Y Takamaru et al: "Novel protein component of SP 40.40 exists in senile plaque amyloid" Advances in the biosciences. vol87. 155-156 (1993)
• [文献書誌] R Fukatsu et al: "Membranous lipodystrophy(Nasu-Hakola disease)with Alzheimer's senile change" Advances in the biosciences. vol87. 33-34 (1993)
• [文献書誌] 高丸勇司ほか: "老人斑アミロイドの構成成分-斑形成過程に関する免疫病理学的検討-" 老年期痴呆研究会誌. 6巻(印刷中). (1993)
• [文献書誌] K Tuzuki et al: "Alzheimer's disease and Parkinson's disease" Plenum Press, 5 (1993)
• [文献書誌] Y Takamaru et al: "Alzheimer's disease and Parkinson'sdisease" Plenum Press, 5 (1993)