研究概要 |
平成5年度中に前ローランド動脈灌流領域の梗塞巣を示す症例を新たに4例経験することができた.また前頭頂動脈灌流領域に一致する梗塞巣を示す1例を観察できた. 前ローランド動脈灌流領域の梗塞巣(中心回前半部より前方でBroca領野を含む病巣)の3例は「これらの病巣はBroca失語を呈さず,むしろ超皮質性運動失語や健忘失語の病像とともに,文法レベルの文構成障害が生じる」というわれわれの従来の観察にほぼ一致するものであった.しかし,言語理解障害が顕著で,発話量が保たれる症例があり,これらの症例はむしろ超皮質性感覚失語に近い失語像を呈した.最近,本邦を中心に前頭葉病巣による超皮質性感覚失語の臨床報告が多く見られる.今回は,前頭葉病変による理解障害と大脳後部病巣による理解障害との相違について比較検討し,学会発表を行った. また,前頭頂動脈の灌流領域に一致する梗塞巣を示す1例を観察した.中心後回後部と頭頂葉前部に限局する病巣で非定型Broca失語(Luriaの求心性運動失語に近い),明瞭なastereognosisが認められた.きわめて興味深い症例であり,論文発表を予定している.
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