研究概要 |
〔研究結果〕 1.進行性核上麻痺(PSP)の大脳皮質に出現するGallyas染色で陽性染色される構造物の電顕による同定. (1)Gallyas染色の銀顆粒が最も多く付着していた構造物は神経細胞核周部と樹状突起内の原線維変化(NFT)であった.検索した限りではtwisted tubules(TT)が主要構成線維であった. (2)神経網構造(neuropil structure)内にみられるGallyas陽性構造はTTから成っていた.シナプスがTTの周囲に認められるときにはGallyas陽性構造が神経突起由来である事の同定は容易であった.しかし染色過程における細胞膜構造の破壊が強く,TTを含む突起の由来する細胞を同定出来ない事が多かった. (3)entorhinal areaにおいては“ghost tangles"もGallyas強陽性であった.しかし,NFTの間に入り込んでいる星状膠細胞のグリア線維には銀顆粒は付着していなかった. (4)腫大し神経細糸を充たした変性神経突起,星状膠細胞のグリア線維束,髄鞘などの神経網構造物には銀顆粒はごくわずかに付着しているのみであった.これらは実質的にはGallyas陰性と判断される. (5)検索しえた限りではPSP-NFTは同定できなかった. 2.Corticonigral degeneration with neuronal achromasia(CND)に出現する嗜銀性神経細胞内構造物(ANI)をPSPと比較検討した.CNDのANIは免疫組織化学的,超微形態的にPSPとは異なっていた. 〔結論〕1.PSPの大脳皮質のGallyas染色陽性構造物はTTが主体であり,他の変性神経突起グリア線維束,髄鞘は陰性であった.2.CNDは細胞病理学的にPSPとは異なった疾患であることが示された。
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