研究概要 |
本研究の目的は意識下のラットを用いて高張食塩水(HS)投与による浸透圧及び血圧上昇時や、脱血による循環血液量減少及び血圧低下時にVP分泌や循環調節において重要な視床下部内側核の神経伝達物質の組織濃度を微小透析法を用いて測定し、血中バゾプレシン(VP)濃度の変化との関係を明らかにすることである。平成5年度は薬剤による血圧変動時及びHS投与時に、視床下部で主に刺激性調節を行うNE及び抑制性調節を行うGABAの組織濃度が変動するか否かを検討した。しかし、予備実験で視床下部透析液中のNE、E、DAの濃度が低く、本実験系での検討は困難と考えられたため、測定可能なNEの代謝産物であるMHPGとGABA濃度について検討することにした。 計画I:昇圧または降圧物質投与実験。Angiotensin II(AII,100ng/kg/min)30分間の静脈投与は平均動脈圧(MAP)を24mmHg上昇し、透析液中のGABA濃度は5倍に増加したが、MHPG濃度には明かな変化を認めず血中AVPも有意な変化を認めなかった。他方、Nitroprusside(10μg/kg/min)30分間投与はMAPを11mmHg低下し、透析液中のGABA濃度を1/4に減少したが、MHPG濃度は不変で、血中AVPは2.5倍に上昇した。Phenylephrine(PHE,6μg/kg/min)30分間の静脈投与はMAPを11mmHg上昇したが、透析液中GABA濃度は不変で、AIIとPHEの中枢作用の相違が示唆された。 計画II:HS末梢静脈投与実験。30分間の2.5M NaCl静脈投与はMAPを上昇し、血中AVPを増加し、透析液中GABA濃度を低下したがMHPGは不変だった。現在、対象例数を増やして更に検討中である。 以上の結果は、視床下部室傍核近傍の組織GABA濃度の明かな変化を示唆しており、特にGABA濃度の低下が末梢へのAVP分泌を促進している可能性が示された。一方、MHPG濃度は明らかな変動を認めなかったが、平成6年度に行う出血実験で変動することが予想される。
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