我々は、TSHレセプターのN端側に近い部分のペプチドに対する抗体を用い、ヒト末梢血中に分子量約6万のTSHレセプター様物質が存在することを見出し、バセドウ病の病因に関与する可能性を報告した。本研究においては、血中のTSHレセプター様物質の性質を明かにするとともに分泌型TSHレセプターの存在について検討することを目的とした。ヒト甲状腺組織を用いてTSHレセプターのnorthern解析を行うとfull lengthの4. 3kbのバンドの他に1. 3kbと1. 7kbのbandが検出される。我々は、Gravesらの報告した1. 3kbのvariantをクローニングしたが、その特有なC端側のアミノ酸配列に対する抗体を作成し、そのRIA系を確立した。しかしながら、ヒト末梢血中においても、1. 3kbのvariantを発現させたCHO細胞のmedium中においても、1. 3kbのvariantの免疫活性は測定感度以下であった。我々は、独自にバセドウ病患者甲状腺のcDNAライブラリーを作成しスクリーニングを行い1. 7kbのvariantのクローニングを試みていたが、最近Huntらがこのクローニングに成功したとの報告がり、現在その確認を行っている。血中のTSHレセプター様物質の精製については、現在TSHレセプターのペプチドに対する家兎抗体を精製し、その抗体を用いて血中のTSHレセプター様物質の精製を行っている。 本研究の過程で、ヒトTSHレセプターを発現させたCHO細胞を用いてバセドウ病患者IgGの刺激活性を測定し、バセドウ病の診断ならびに経過観察に極めて有用であることを見出し報告した。また、血中のTSHレセプター様物質を認識する抗体すなわちTSHレセプター細胞外部分のN端側のペプチドに対する抗体は、ヒトTSHレセプター発現CHO細胞を有意に刺激する一方、C端側のペプチドに対する抗体は、ヒトTSHレセプター発現CHO細胞を有意に抑制することを見出し報告した。
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