ヒト膵島アミロイド蛋白(IAPP)を発現するトランスジェニックマウスと形質転換マウス膵B細胞株を開発し、同蛋白の発現とインスリン非依存型糖尿病との関係について検討した。 1。トランスジェニックマウスを用いて、膵島アミロイドの沈着機序と糖尿病の発症・伸展におよぼすIAPPの影響について検討した。 (1)同マウスにおいて、膵B細胞の分泌顆粒中にIAPP由来のアミロイド線維を認め、分泌顆粒中に形成されたアミロイド線維が細胞外に放出され、膵島アミロイドが沈着する可能性が示唆された。 (2)加齢と長期間の蔗糖および高脂肪食飼育負荷の影響について検討したが、アミロイド沈着および糖尿病の発症を認めなかった。ヒトIAPPの発現のみでは糖尿病は発症しない可能性が示唆された。以上の成果を日本糖尿病学会年次学術集会と15th International Diabetes Federation Congressに発表した。論文をEur.J.Endocrinol.に発表予定である。 2。トランスフェクション法によりヒトIAPPcDNAを形質転換マウス膵B細胞に導入し、ヒトIAPP発現膵B細胞株を樹立した。同細胞株においてインスリン合成は正常であるが、ブドウ糖刺激によるインスリン分泌が低下した。IAPPの過剰発現が同糖尿病のインスリン分泌障害に関連している可能性が示唆された。以上の成果を日本糖尿病学会年次学術集会とPancreatic Beta-Cell 1994 from Molecular Biology to Clinical Medicineに発表した。更に、糖尿病患者におけるIAPP遺伝子について、また膵島アミロイドの沈着におけるIAPP前駆体の関与について、論文を発表した。以上の研究成果は、IAPP遺伝子の発現と同糖尿病に見られる膵島アミロイド沈着およびインスリン分泌障害との関係を解明するために貢献したと思われる。
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