インスリンの作用機構はいまだ不明であるが、その抗脂肪分解作用としてインスリン感受性サイクリックAMP分解酵素(PDE)の活性化によるサイクリックAMPの低下が考えられている。最近平良らによりラット脂肪組織PDEcDNAがクローニングされた。彼らの結果によるとこのPDEはノザンブロット法による検討で脂肪組織に特異的に発現しており、3T3L1細胞で脂肪細胞に分化後強く発現し、またE.Coliを用いた蛋白発現システムでPDE活性を認めたことよりこのPDEがラットのインスリン感受性サイクリックAMP分解酵素であることが確認された。そこで彼らとの共同研究でこのラットPDEcDNAをプローブとして用いヒト脂肪組織cDNAライブラリイをスクリーニングしヒトPDEcDNAのクローニングを行った。得られたポジテイブクローンの塩基配列を決定しヒトPDEcDNA全長を明かにした。ラットPDEcDNAとの塩基配列の比較検討を行った所かなりの相同性を認めた。ついでヒトPDEcDNAをプローブとし、ヒト遺伝子ライブラリイをスクリーニングしポジテイブクローンを得た。これらのクローンについて制限酵素部位を決定、制限酵素地図を作製しエクソンの配列部位を決定した。更にエクソン部位を中心に塩基配列を決定しエクソンイントロン部位を明かにした。その結果スプライス部位は多くの遺伝子のようにGT-AGルールに従っていることが明かとなった。今後イントロン内にプライマーを作製しPCR-SSCP法によりインスリン非依存型糖尿病のPDE遺伝子異常の有無につき検討する予定である。
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