糖尿病性腎症では腎糸球体のメサンギウム領域にIV型コラーゲンを主体とする糖蛋白の蓄積が生じ、腎機能の荒廃が引き起こされる。このIV型コラーゲンの蓄積には高血糖に伴う糸球体細胞での代謝異常が主要な役割を生じているものと思われ、本年度は主としてIV型コラーゲンの産生系の変異について検討を加えた。 糸球体細胞としては培養ラットメサンギウム細胞を用い、高糖濃度条件下でのIV型コラーゲン量(ELISA法)、IV型コラーゲンmRNA量(northern blot法)の変化を観察した。 その結果、28mMグルコースでは5mMグルコースに比し、IV型コラーゲン量が有意に増加していた。しかしながら、α1(IV)鎖cNAを用いた法ではIV型コラーゲンmMNAの有意の増加を見いだし得なかった。これ迄、研究代表者らは高グルコース条件下ではメサンギウム細胞のプロテインキナーゼc(PKC)活性、特にPKC-αの活性が亢進していることを認めている。しかし、PKCがIV型コラーゲンmMRNA発現量を増加させると報告されてた。また、高グルコース下ではTGC-βの産生量増加を介してIV型コラーゲンmRNAの発現が増強するとの報告もある。しかし予想に反し高グルコースによるmRNAの変化が認められなかった。従ってIV型コラーゲンの分解系での変異について解析を進めていくことが重要と思われた。
|