研究概要 |
1.橋本病およびバセドー病患者におけるHTLV-I感染者の検索 1)橋本病患者145例の血清抗HTLV-I抗体を凝集法およびウエスタンブロット法により調べ,10例(6.9%)の抗体陽性者が発見された.この頻度は当地域のキャリアにおける頻度(2%)に比べて有意に高頻度であった. 2)バセドー病患者88例では3例(3.4%)の同抗体陽性者が発見された.この頻度は,一般人のHTLV-Iキャリアの頻度に比べ有意に高値ではないが,HTLV-Iキュリアの中にHTLV-I関連疾患のブドウ膜炎,関節炎を合併するバセドー病2家系3症例が見出された. 3)献血者706名について抗HTLV-I抗体を検査し,抗体陽性者における甲状腺自己抗体を調べた結果,陽性率は8.6%であった.この値は抗HTLV-I抗体陰性者における同頻度(5.5%)に比べて高頻度であった. 2.橋本病およびバセドー病患者におけるHTLV-II感染者の検索 1)橋本病患者33例中17例(52%)とバセドウ病患者17例中2例(12%)にHTLV-IIプロウイルスDNAをPCR法にて検出できた.それらの頻度は疾患対照の2%,健常対照の1%度に比較して有意に高頻度であった. 2)増幅されたPCR産物の塩基配列を調べると,その配列はコントロールのHTLV-IIプロウイルスDNAのそれとほぼ一致していた.しかしプロウイルス陽性の両疾患患者では血清抗HTLV-II抗体は合成ペプチドを用いたEIA法では陰性であった. 3.橋本病およびバセドウ病患者の甲状腺組織中のHTLV-Iウイルスの検索 血清抗HTLV-I抗体陽性の橋本病患者2例の甲状腺組織内の甲状腺組織切片を抗HTLV-I蛋白抗体を用いて免疫組織化学にて検索し,1例の甲状腺濾胞上皮細胞および浸潤リンパ球にHTLV-I蛋白を検出した.また,この例の甲状腺組織中にin situ hybridization法にてHTLV-IのmRNAを検出した. 4.HTLV-I感染性甲状腺疾患モデルの作製 家兎(5羽)にHTLV-I感染者の血液を静注し,HTLV-I感染家兎を作製することができた.この家兎の甲状腺機能,甲状腺自己抗体を検索中である.
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