下垂体ホルモン分泌調節に対するインヒビン/アクチビンの局所的な関与を明かにする目的で、手術時に得られたヒト下垂体腺腫のインヒビン/アクチビンalpha、beta_AおよびアクチビンタイプIIレセプター(アクチビンR)のmRNAの発現をRT-PCR法を用いて検討した。対象は非機能性下垂体腺腫8例、末端肥大症2例、クッシング病2例、プロラクチノーマ3例であった。得られた組織よりAGPC法、更にダイナビーズにてmRNAを分離、精製、ランダムプライマーにて逆転写を行い、cDNAを鋳型にしPCRを行った。PCR終了後、組織重量300mugあたりの反応液を電気泳動し、紫外線照射によりDNAバンドの検出を行った。増幅DNAバンドのサイズは、beta_A285bp、alpha367bp、アクチビンRは389bpであった。beta_AサブユニットのmRNAはすべての下垂体腺腫に発現していた。alphaサブユニットは非機能性腺腫8例中6例及びクッシング病とプロラクチノーマの各1例で発現していた。アクチビンRは非機能性腺腫8例中4例に発現していたが、ホルモン産生腺腫では1例も認められなかった。インヒビンは内分泌学的にFSH分泌を特異的に抑制するほか、アクチビンと共に下垂体に局在し、種々の下垂体ホルモンの分泌調節にも関与していると報告されている。我々のヒト下垂体腺腫での検討でbeta_Aサブユニットはすべての腺腫に存在することから、beta_Aのダイマーであるアクチビンは特定のホルモン分泌とは関係なく、組織の成長や分化などに関与していることが示唆された。一方、インヒビンを構成するalphaサブユニットが非機能性腺腫に高率に発現していることは、非機能性腺腫の多くがゴナドトロピン産生腺腫である可能性や、ゴナドトロピン分泌との関連を示唆する成績と思われた。アクチビンRの意義について更に検討中である。
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