昨年度に引き続き、ホルモン分泌能の異なるヒト下垂体腺腫約30例の組織を用いてPCRによりインヒビン・アクチビンのα、β_Aサブユニット及びアクチビンのII型レセプターのmRNAを検索し以下の成績を得た。ヒト下垂体腺腫ではβ_AmRNAは100%、αは86.2%とホルモン産生能を問わず高頻度に検出された。一方、アクチビンII型レセプターはホルモン産生腺腫の25%に対し、非機能性腺腫では64.7%に陽性で両者に差が認められた。以上の成績からヒト下垂体腺腫組織はα、βのヘテロダイマーであるインヒビン、あるいはβのホモダイマーであるアクチビンを局所産生し、それが組織内でautocrine/paracrineに作用してホルモン分泌、あるいは組織の増殖に関与しているものと考えられた。とくに非機能性腺腫でアクチビンレセプターの発現率が高いことは臨床的に非機能性腺腫の多くが潜在性にゴナドトロピンを産生し、インヒビタン・アクチビンがその局所調節に関与している可能性が示唆された。一方、PCRによりα、β_AmRNA陽性例のうち、とくに非機能性腺腫およびGH産生腺腫で免疫組織学的にもα、β_A染色の陽性例が多く認められた。 更に組織の腫瘍化に対するインヒビン・アクチビンの関与を検討する目的で下垂体腺腫以外の悪性度の異なる脳腫瘍組織を用いて同様の検討を行った。β_AmRNAはすべての腫瘍組織で検出されたが、αmRNA及びアクチビンレセプターmRNAは悪性度の高い腫瘍で発現率が高い傾向を認めたが、この点については更に検討を継続する予定である。
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