研究概要 |
定量的RT-PCR法を確立し、下垂体腺腫細胞内のインヒビンα、β_AサブユニットmRNAレベルを測定し、更にアクチビン添加前後のレベルの変化などから発現の調節の一端を検討した。対象は手術の際に得られたヒトGH adenoma,プロラクチノーマ及び非機能性腺腫の9例とした。組織は直ちにdisperseして1wellあたり10^5cellとして10%FCS-DMEM-F12medium中で4日間preincubationし、10nM activin添加前及び4時間後に細胞を採取し、AGPC法にてtotalRNAを抽出、逆転写によりcDNAを得た。定量的RT-PCRはRT-PCR産物をstandardとし、5′end labelingにより標識した^<32>P標識プライマーを添加してPCRを行い、2%agarose gel electrophoresisの後Fujix BAS2000でautoradiographyによりイメージング分析を行った。結果はαサブユニットmRNAはいずれの腺腫でも検出不能の低値であり、activin添加後にも変わりが無かったのに対し、β_AサブユニットmRNAはすべての例で検出可能であり、各群の平均値は0.38,0.67及び0.96molecule/cellで、activin添加後には9例中5例でレベルの低下を認めた。これ迄ヒト下垂体腺腫のインヒビンサブユニットについてはわずかにAlexanderらがgonadotropinomaでαサブユニットが検出されること、Snyderらはゴナドトロピノーマではβ_Bサブユニットが検出されたがβ_Aサブユニットはされないと報告しているが、我々の結果は先に示した成績とも合わせて、ヒト下垂体腺腫ではホルモン産生の相異にかかわらずβ_Aサブユニットが存在し、その存在割合がαサブユニットに比べて高いこと、またactivin添加の成績から、その発現がactivinによりnegativeに調節されている可能性を示唆するものと考えた。β_AmRNAレベルは腺腫のホルモン産生能とはとくに関連がなくホルモン分泌との関連については更に検討をしたい。
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