研究概要 |
私どもは1型糖尿病の膵島病変の成立に浸潤細胞および膵beta細胞自体が産生するtumor necrosisfactor-alpha(TNF-alpha)が関与している可能性を示してきた。TNF receptorには2種類のsubclassの存在が知られている。そこで、膵島細胞のTNF receptorのsubclassをRT-PCR法で検討したところ,正常マウス膵島細胞がTNF receptor type 1,type 2の両方のmRNAを有していることが示された。transgenic mouse由来のbeta-cell line(betaTC1)は同様に両typeのmRNAを発現していたが,alpha-cell line(alphaTC1)においてはtype 1のmRNAのみが認められた。TNFの細胞障害作用は主にtype 1 receptorによって媒介されると考えられているが,膵島においてtype 2 receptorがbeta-cellに特異的に発現しているとすると,1型糖尿病膵島のbeta細胞選択的な病変の成立にtype 2 receptorが関与している可能性がある。 TNF-alphaは単独では膵島細胞障害作用が弱いが,IFN-gammaとの併用すると著明な細胞障害作用を示す。しかし,この協調作用の機序はこれまで明かではなかった。私どもはTNF-alpha,IFN-gammaの両者を併用するとマウス膵島細胞のnitric oxide(NO)産生を引き起こすことを明らかにし,このNO産生作用がマクロファージ型のNO合成酵素のmRNA誘導によることを証明した。NO産生を阻害することにより細胞障害を抑制できたことから,NOがeffector moleculeとして作用していると考えられる。今後,NODマウス等を用いてin vivoでのNO合成酵素の誘導を検討する予定である。
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