本年度はソマトスタチン刺激で細胞膜から遊離したαサブユニットの生化学的特性を検討した。百日咳毒素基質(Gi/Go)はαの単量体のときは基質となりず、αβγの3量体構造の時ADP-リボシル化されることから、細胞膜から遊離したαサブユニットのβγサブユニットとの再会合の可能性について検討した。細胞膜から遊離したαサブユニットはβγサブユニットの濃度に依存してADP-リボシル化率が上昇してβγサブユニットと再会合が可能なことを示した。さらにいったん細胞膜から遊離したαサブユニットはまた細胞膜に結合するかどうかを検討した。遊離したαサブユニットは膜画分とインキュベートしても膜画分に移行しないが、βγサブユニットの存在のもとでインキュベートすると膜画分に移行した。この移行はβγサブユニットの濃度に依存して起きた。GTP結合蛋白質のαサブユニットの膜への結合の仕方として、Gi/GoのαサブユニットはN末の2位のグリシン残基がミリスチル化されており、このミリスチル酸が細胞膜結合に重要な役割を果すと考えられているが、ホルモン刺激で細胞膜から遊離したGi2のαサブユニットはミリスチル酸を保持していた。ソマトスタチン刺激によって細胞膜から遊離したαiサブユニットがさらにふたたび細胞膜に結合することが示唆された今回の実験結果は、情報伝達因子のクロストークの実際を示したものである。
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