研究概要 |
アルファ2プラスミンインヒビター(α2plasmin inhibitor以下α2Plと略す)は、線溶系の制御に重要な血漿糖蛋白質である。今回の研究は、α2Pl遺伝子の発現調節に必要な領域の、より詳細な研究と、プロモーター領域に結合する転写活性因子についてである。翻訳開始部位の上流に3種類のエクソンが存在し、一番上流のエクソンの約1.5キロ塩基内に、40塩基対の強いプロモーター領域のあることを既に証明している。この40塩基対のプロモーター領域の塩基配列をみると、アルブミン遺伝子の発現に重要な因子DE1とC/EBPとそれぞれ71.4%,80%のホモロジーを有していた。これらの領域が実際にα2Pl遺伝子の発現に関わっているかどうかを検討することが重要である。この40塩基対に対応する日本鎖のオリゴヌクレオチドを合成した。次に、Dignamらの方法に従って、肝癌細胞由来のHepG2細胞より核蛋白質を抽出した。この核蛋白質と、32Pでラベルした40塩基の合成オリゴヌクレオチドのフラグメントを室温で30分反応させ、反応終了後、ポリアクリルアミドゲルにて泳動した。ゲルを乾燥後にオートラジオグラムを得て、蛋白質の結合したフラグメントは移動度の遅れたバンドとして検出することができた。結合の特異性は非ラベルのフラグメントとの競合実験で確認した。これらのことより、40塩基対には、肝細胞特異的な核蛋白質が結合してα2Plの遺伝子の発現に関与していると考えられる。現在、DNaseによるフットプリンティングにてどの塩基配列に結合するかをより詳細に検討中である。
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