研究概要 |
1)B細胞性急性リンパ性白血病(L3;バーキット型)由来細胞株における研究 我々はこれまでに特有な転座をもつバーキットリンパ腫(L3)由来細胞株を2つ(KHM-2B,KHM-10B)樹立している。KHM-2Bはバーキットリンパ腫に特徴的なt(8;14)転座と、さらにt(14;18)転座をもち、その結果c-myc,bcl-2が各々活性化されている。KHM-10BはL3由来細胞株でありながらもt(8;14)転座をもたず、そのかわりに13q34異常が認められている。今回c-mycやさらにc-mycの活性に重要なmaxの発現と白血病化機序の関係を明らかにすべく、各細胞株の同調培養を試み、それに成功した。今後は各細胞周期におけるc-myc,maxやbcl-2などの癌遺伝子の発現を調べて、細胞増殖機構を明らかにしようと考えている。予備的結果ではmyc,maxは細胞周期に関係なく発現が増強されており(脱調節化)、その原因はKHM-2Bの場合、c-myc転座のためと考えられるが、KHM-10Bでは転座以外の機序が考えられ、バーキットリンパ腫発症機序を考えるうえで興味深い。 特異な病態を示した骨髄腫由来細胞株を用いた研究 以前高アンモニア血症、血中アミノ酸異常を示した骨髄腫症例からKHM-4細胞株をすでに樹立していたが、今回新たに同様の病態を示した骨髄腫患者より、細胞株(KHM-11)の樹立にも成功した。患者に認められた病態を解析するためにスキッドマウスへの移植を試みているが、まだ成功していない。最近IL-6トランスジェニックスキッドマウスを使用することができるようになったことから、このマウスへの移植を試みている。現在までに同様の病態を呈した患者は6例に達し、その血中アミノ酸異常には一定のパターンがあり、高アンモニア血症をきたす慢性肝不全患者のそれとはまったく異なることを明らかにした。
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