研究概要 |
我々は以前からB細胞腫瘍の病因及び病態解析の有力手段として、細胞株の樹立を試みている。今回は新たに多発性骨髄腫とバ-キットリンパ腫患者からの細胞株の樹立に成功、それを使用した病態解析を試みた。 1)多発性骨髄腫由来細胞株(KHM-11)を用いた解析。 KHM-11は高LDH血症を呈した骨髄腫患者由来の細胞株である(Leukemia8:1768-1773,1994)。従来高LDH血症を示す骨髄腫患者は予後が悪く、特殊な病像をとることが知られていた。患者血清LDH値は腫瘍量と相関することから、LDHは腫瘍細胞由来であることが考えられた。そこでまずKHM-11がapoptosisを生じることかどうか検討したところ、KHM-11はFas抗原陽性で、抗Fas抗体でapoptosisを生じることが判明した。さらに興味深いことに、KHM-11のcell lyzateでもapoptosisを生じることから、自己apoptosisの機序も存在することが示唆された。また患者のfresh cellを用いた解析では14例中10例がFAS抗原陽性で、8例中3例は抗Fas抗体でapoptosisを示した。apoptosisは細胞増殖機構と深くむすびついた現象であり、高LDH血症と予後不良を説明するものと考えられる。 2)バ-キットリンバ腫由来細胞株(KHM-10B)を用いた解析15EA05:KHM-10Bはnon-endemicバ-キットリンパ腫患者より樹立された。EBウイルスは陰性で、通常の染色体分析でc-myc(8q24)転座は認められなかったものの、その後のFISH法による検討で、masked t(8;22)転座の存在が示された。我々はこの細胞株の同調培養に成功し、c-mycが細胞周期independentに発現されていることを明らかにした。またc-mycとヘテロダイマーを形成するmaxも恒常的に発現されており、これらの異常発現がバ-キットリンパ腫の発症に関与しているものと考えられた。
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