研究概要 |
患者末梢血より採取した成人T細胞性白血病(以下ATLと略す)細胞をそのまま、または10%胎児牛血清を添加したRPMI1640培養液で2日ないし4日培養し、その後、核蛋白とmessengerRNAを分離し、以下の検討を行つた。転写因子NF-kBの検出:Gel-shift法で、NF-kB複合体が検出された。培養2日ないし4日後に、その活性は上昇した。UV-crosslinking法えは、p85(c-relprotein),p65NF-kB,p55NF-kB(KBF1protein)およびp50-NF-kBの4種類のNF-kBが検出された。培養することにより、p85とp65NF-kBの著しい誘導増強が認められた。p55NF-kBとp50NF-kBの増強は中等度ないし軽度であり、蛋白種により異なる誘導パターンが認められた。NF-kBの培養による誘導増強はATL病型では急性型で認められ、慢性型では軽度であつた。Northern blot法によるmessengerRNAの分析では、c-rel mRNAおよびKBF1mRNAの誘導ないし誘導増強が培養により認められた。特に前者で著明であつた。これらの変化は特に急性型で明瞭に見られた。以上より、NF-kBの誘導ないしc-relやKBF1遺伝子の誘導がATLにおける病型病態に密接に関係していることが示唆された。今後の課題として、急性型、慢性型の差が何に由来するのかを分子レベルで明らかにしていくことが重要である。
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