研究概要 |
我々はエリスロポエチン(Epo)依存性ヒト巨核芽球性細胞株UT-7の樹立に成功し(Cancer Research 51:341,1991)、ヒトEpo受容体cDNAのクローニング及びその機能解析について研究を進めてきた(science 257:1138,1992)。さらにEpo刺激によってp85蛋白のチロシンリン酸化が強く誘導されることを見出した(Blood 80:53,1992)。最近UT-7から分離した赤芽球系の性質を持つ亜株UT-7/Epo(Blood 82:456,1993)でもp85蛋白のチロシンリン酸化が強く誘導されることからp85蛋白の機能的意義を明らかにすることを本研究の目的とした。ウエスタンブロッティング法によってp85蛋白はEpo受容体でもraf-1セリン/スレオニンキナーゼではないことを確認している。またEpoによってPl3キナーゼは活性化されないことから、p85がPl3キナーゼである可能性は少ないと考える。抗リン酸化チロシン抗体で免疫沈降後、抗Pl3イナーゼ抗体を用いてウエスタンブロッティング法を行ったが。明らかなPl3キナーゼ分子は検出できなかった。また抗体Epo受容体抗体でも検出されなったことから、Epo受容体ではないと思われる。今後はUT-7細胞をEpo添加後可溶化し、抗リン酸化チロシン抗体を用いて、免疫沈降後電気泳動を行い、目的とするp85を切出しアミノ酸分析を行う。決定された部分的アミノ酸一次構造をもとに、オリゴヌクレオチドを合成し、^<32>Pで標識、プローブとし、UT-7から作製したcDNA libraryから陽性クローンを吊り上げる。その塩基配列を決定し、それをもとに全アミノ酸一次構造を決定し、p85蛋白の構造上の機能を明らかにする。p85蛋白遺伝子を組み込んだ大腸菌発現プラスミドを作製し、大腸菌で蛋白を発現させる。この純品をウサギに免疫し、ポリクローナル抗体を作製し、ウエスタン法ならびに免疫沈降法を用いて、p85蛋白とEpo受容体、さらには他のシグナル伝達分子との相互関係についても解析する。
|