我々はバイオテクノロジーを用いて血小板膜糖蛋白Ib-IX複合体の一部を培養動物細胞に発現することに成功し、分泌されたこの可溶性蛋白がin vitroでフォンビルブランド因子と血小板の反応を特異的に抑制することを既に報告した。本研究は、このリコンビナント蛋白を有用な抗血栓薬として用いうることを前提に、GPIb-IXのドメイン特異的発現を通じて活性部位の決定を行ない、あわせて抗血栓作用をもちうる最小単位の同定と機能におよぼすアミノ酸変異や蛋白の翻訳後修飾の影響について検討することを目的としている。 平成5年度は、すでに作成されたリコンビナントGPIb-IX受容体をコードするDNAを鋳型として、これがリガンドの理想的な競合抑制物質となるよう分子を改良した。研究方法は以下の通りであった。deletion mutantの作成:現在のリコンビナント分子は約300個のアミノ酸より構成されていたため、より小さい分子を作成した。(アミノ酸1-180、61-302、181-302の3種類)具体的にはM13ファージ上でloop out法により特定部位を欠失させ、できたインサートDNAを制限酵素で切り出して発現ベクターヘクローニングし、CHO細胞に発現させた。発現された蛋白はそれぞれエピトープの判明しているモノクローナル抗体とよく反応しているが、リガンドと特異的に結合するか、そして競合抑制物質となりうるかは今後の検討を待たねばならない。
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