研究概要 |
生体に不要になった細胞を、組織全体の機能に影響を与えることなく除去する生理学的細胞死をprogrammed cell deathまたはapoptosisという。平成5年度には、apoptosis関連抗原であるFas抗原の造血幹細胞での発現を検討し、正常ヒト抹消血では、Fas抗原は、顆粒球、単球、赤血球など成熟細胞に発現されているが、未熟な造血幹細胞ではFas抗原の発現は低く、分化とともにFas抗原が陽性となることを明らかにした。 平成6年度は上述の成果をふまえて、造血幹細胞分化のどの段階でFasが陽性になってくるかを、CD34,CD33,CD13,CD71,CD36等の分化抗原とFas抗原との関連で更に詳細に検討した。その結果、赤血球系の分化においてFas抗原は未熟な赤芽球バースト形成細胞(BFU-E)の多くは陰性であるが、比較的成熟した前駆細胞である赤芽球コロニー形成細胞(CFU-E)では陽性となった。また、抗Fas抗体の添加でCFU-Eコロニーの形成が抑制され、CFU-Eは機能的なFasレセプターを有していると考えられた。赤血球系造血は、Fas ligandによるapoptosisを介してnegativeにコントロールされている可能性が示唆された。
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