研究概要 |
リンパ性幹細胞性造血悪性腫瘍と考えられる16例のCD7陽性幹細胞性白血病と鼻腔原発悪性リンパ腫症例9例を免疫関連遺伝子とくにTcRdelta遺伝子を解析した。5年度では、TcRdelta遺伝子の特殊な再構成様式DDJdeltaが高頻度に生じていること細胞質内CD3epsilonよりもより未熟幹細胞レベルでDDJdeltaが起こっている事を報告した。この結果よりTcRdelta鎖再構成は、T細胞系ではDD→DDJ→VDDJの順におこる事、DDJ再構成は幹細胞レベルでのT細胞系で最初の唯一のマーカーである事などが判明した。 明らかに臨床像に特徴ある前胸腺細胞由来の腫瘍と思われ一つの疾患単位が5/16の症例に存在する事を報告し、それを前胸腺細胞性リンパ腫と提言。リンパ系/骨髄系共通幹細胞(T/M,T/B/M)での異常と思われる。発症時は、末梢血に幼若悪性細胞の出現なく、幼若T細胞系以外の形質は認めず、再発時は急性骨髄性の白血病が起こり化学療法も効かずに死亡する。この群にたいする治療は、最初から造血幹細胞移植以外に方法はなにように思われた。 鼻腔原発悪性リンパ腫はこれまでT細胞系と考えられていたが、TcRdelta鎖やbeta鎖再構成がなく、一例を除き全てNK細胞由来のリンパ腫と判明した。この腫瘍細胞には全ての症例でEBウイルスgenomeのintegrationが単一性にみられ既感染型であった。NK系でも細胞質内CD3epsilon陽性を示す胎児型が多く見られた。NK細胞とT細胞との共通幹細胞の存在を示唆されている。 今回の検討によりdelta鎖のDDJ再構成はT幹細胞レベルでも最も早期に生じうることが判明し、幹細胞レベルでのT系判定に唯一のマーカーになり得ることが判明した今後、殆ど不明であったリンパ系幹細胞の研究が大いに進展するものと思われた。
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