ヒト難治性ネフローゼ症候群の成人における主たる原因疾患となっている膜性腎炎の実験モデルであるハイマン腎炎の病因抗原の研究をすすめてきた。先ず、ラット腎尿細管上皮可溶性分画を用いて病因抗原に対するモノクローナル抗体を作成し、さらに、その抗体をカラムに結合させて、アフィニティ・カラム法で分子量的12万の病因抗原を分離しえた。この抗原は、ラットに免疫すると、同一抗原を含む免疫複合体が糸球体基底膜上皮下に沈着して膜性腎炎を発症させるため、病因抗原であることは確実である。この抗原は、国際的に種々報告されてきている病因抗原の中で、最も分子量が小さく、従って、最も純化の進んだ抗原と言えよう。 次に、我々の得た抗原と従来報告されてきている抗原との異同について比較検討をすすめた結果、従来、抗原の本命と目されてきたgp330抗原(Kerjaschkirら)は、我々の分離した抗原と、腎炎発症に関係の無い他の抗原成分との複合抗原であることが判明した。 以上の成果は、昨年、イスラエルで開催された第12回国際腎臓学会で発表し、原著論文として塚田がJ.Clin.Exp.Immunolに投稿し、採択された。 現在は、この精製抗原のアミノ酸排列を分析し、それよりDNA・プローブを作成して、腎組織におけるmRNAの発現を検討して、国際的に議論の対象となっている病因抗原の産生部位を確定すると共に、病因抗原のcDNAのクローニングを検討中である。また、膜性腎炎の発症機序の解明のために重要である血中の病因抗原より構成される免疫複合体の経時的な変動の検討も合わせ行っている。
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