平成5年度中の研究実績としてはまず第一はBALB/cマウスの正常腎よりの近位尿細管上皮細胞培養法を確立した。培養細胞の同定法としては培養細胞群のドーム形成能、光顕および電顕による形態、γ-GTP等の近位尿細管上皮細胞の持つ特異的酵素の有無など用い、我々が培養した細胞が近位尿細管上皮細胞であることを確認した。ここで得られた培養細胞は無処置にては極少量のみICAM-1を細胞表面に表出していた。一方、BALB/cマウスに正常ddYマウス腎より精製した尿細管基底膜(TBM)抗原をアジュバントと共に免疫して得られたTBM抗原感作リンパ球あるいはマクロファージを培養細胞と混合培養すると数時間以内に培養尿細管細胞表面に大量のICAM-1の表出が認められた。またそれに続いて尿細管細胞は膨化変性し同細胞の培養プレートへの付着能が著しく低下し培養液中に浮遊した。浮遊細胞はトリパンブルー染色にて死細胞であることが確認できた。以上の結果は平成5年12月の日本腎臓学会総会にて報告した。現在培養尿細管細胞と混合培養する免疫細胞を各種表面マーカーにて分画しICAM-1等の接着因子の表出や細胞障害に関与する細胞分画を同定するべく精力的に実験を行っている。また現在までの実験においては第一代培養細胞のみを利用しているが、培養条件を工夫し培養を数代継代出来るようになったので今後の実験においては安定した3-4代目の細胞を使用する予定である。さらに我々は手術標本の腎小片よりの人の近位尿細管上皮細胞も並行して試みているが、やはり継代可能なレベルに到達しており今後直接実際の臨床に役立つ研究へ結び付ける予定である。
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