研究概要 |
ラットにおいて実験的糸球体障害を作製し血管平滑筋ミオシン重鎖アイソフォーム血管系および糸球体メサンギウム細胞における発現を観察した。1.腎亜全摘モデル:術後4週後と8週後に屠殺し,腎血管系および糸球体におけるミオシン重鎖とαアクチンの発現を酵素抗体法により観察した。もっとも分化し収縮力の強い平滑筋細胞に発現すると考えられるSM2の発現が輸入細動脈において低下する傾向にあった。また,正常ラットのメサンギウム細胞には発現していないSMembが腎亜全摘ラットでは発現していた。このSMembの発現は4週後よりも8週後の方が強かった。2.抗糸球体基底膜抗体腎炎:抗糸球体基底膜抗体を静注し作製したラット糸球体腎炎では血管系のSM2やαアクチンの発現に変化は見られなかったが,メサンギウム細胞にSMembの発現が観察された。3.ストレプトゾトシン糖尿病ラット:糖尿病作製4週後の腎の酵素抗体法ではSM2の発現が動脈および細動脈で低下する傾向にあった。またメサンギウム細胞にSMembが発現していた。4.高血圧自然発症ラット:加齢とともに動脈および細動脈においてSM2の発現が低下することが観察された。平成6年度の研究計画は、1.ラット実験群の作製:5/6腎摘ラット,抗糸球体基底膜抗体腎炎。ストレプトゾトシン糖尿病ラット,高血圧自然発症ラット、2.ミオシン重鎖アイソフォームcDNAを用いたin situ hybridization法によりそれぞれのアイソフォームのmRNAの発現を検討する。3.水腎症モデルによる細動脈とメサンギウム細胞の機能の検討:ラットの左尿管を結紮し水腎症を作製し,上記と同じ実験群を作製する。顕微鏡下に直接in vivoで細動脈と糸球体係蹄を観察する。腎灌流圧変化および各種血管作動物質に対する反応をビデオテープに記録する。ビデオテープを再生し細動脈内径の変化と糸球体係蹄の容積の変化を解析する。赤血球速度トラッキング・コリレータにより細動脈内血流速度を測定する。
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