研究概要 |
ラットにおいて実験的糸球体障害を作製し平滑筋ミオシン重鎖アイリフォームの血管系および糸球体細胞における発現を観察した。1.抗thyl抗体腎炎:病初期(抗血清静注3日目)にメサンギウム細胞にα-アクチンが、ややおくれて5日目以降から非筋型ミオシンであるSMembが発現した。SMembは正常糸球体では上皮細胞のみにわずかに発現しており、メサンギウム細胞には発現していない。細胞の増殖期を過ぎて糸球体の増殖期に入った21日目にはα-アクチンは減少するがSMembは持続して発現が見られた。SMembを発現する細胞がメサンギウム細胞であることは免疫電顕で確認された。また、ノーザン分析でもSMembの単雑糸球体での発現増強が示された。2.腎亜全摘モデル,抗糸球体甚底膜抗体腎炎,ストレプトゾトシン誘発糖尿病:これらのモデルでは糸球体障害のどの時期でもα-アクチンの糸球体細胞での発現が見られなかった。SMembはメサンギウム細胞および上皮細胞での発現が増強した。これらのモデルでも、免疫電顕によりSMemb発現細胞はメサンギウムおよび上皮細胞であることが確認された。腎亜全摘モデルでは腎指4週間後にはメサンギウム細胞細胞に、8週目では上皮細胞に主としてSMembは発現しており、16週ではその発現は低下した。以上のように、糸球体障害ではモデルにより、また病期により形質変換しSMembあるいはα-アクチンを発現する糸球体細胞が異なることが示された。このように糸球体障害の発症と進展の過程において糸球体細胞にダイナミックな変化が起こっているが、その生理的な意義は不明である。3.悪性高血圧モデル:脳卒中易発症性高血圧自然発症ラットに食塩を負荷して悪性高血圧を作製すると、輸入細動脈平滑筋においてSM_2(劣化し強い収縮力を有する平滑筋に発現するミオシン)の発現が著しく低下した。これは糸球体内圧の調節能の低下から、高血圧性糸球体障害を促進する要因となっていると考えられた。
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